多くのスポーツ自転車に備わっている「◯段変速」といったギア、すなわち「変速装置」。どちらかというと変速段数に目がいきがちですが、よくよく観察してみると変速装置そのものにも種類があることがわかります。今回はそんな、変速装置の違いについて紹介していきます。
同じ「リア8段変速」にも種類がある
新型コロナウイルスが蔓延する中、自転車は通勤や通学時の感染リスクを軽減できるばかりでなく、適度な運動により免疫力の向上を期待できるとして見直されています。この機会に、クロスバイクを手に入れたいと思われる方もいることでしょう。
しかし、実際に自転車店に行って自転車を眺めてみると、意外と「これって何?」と思うことが多いのではないでしょうか。今回紹介する変速装置も、そんな疑問を抱きがちなもののひとつです。
例えば、ひとくちに「リア8段変速」といっても種類があるのです。
まず、こちらの写真を見てみましょう。
続いては、こちら。
実はどちらも8段変速なのですが、見た目からして違いますよね。前者を「外装変速」、後者を「内装変速」と言います。BRIDGESTONE GREEN LABELのラインナップで言えば、CYLVA F24は外装変速を、ORDINA F8Bは内装変速を採用しています。
いったい、見た目以外に何が違うのでしょうか。
外装変速とは
外装変速は、スポーツ自転車で利用されているもっとも一般的な変速装置の種類です。変速装置が外部に露出しているので「外装」と呼ばれています。
その仕組みは、前のギアには「フロントディレイラー」、後ろのギアには「リアディレイラー」という変速機が備わり、シフトレバーを操作することでチェーンが歯車から歯車へとスライドしてギアが変わるというものです。
外装変速のメリット
外装変速には、次のようなメリットがあります。
・変速段数を増やして幅広い地形に対応できる
外装変速では「前2段×後ろ11段の22段変速」や「前3段×後ろ8段の24段変速」といったような多段変速が普及しています。変速段数が多いと、平地から急な上り坂まで、幅広い地形で適切なギアを選んで、スムーズに走行できます。
・軽量でシンプル
内装変速機に比べると構造がシンプルで、軽量です。
・メンテナンスしやすい
シンプルであるがゆえにメンテナンスがしやすいのも特徴です。また、慣れれば車輪の脱着も容易に行えます。
このようなメリットからスポーツ自転車では外装変速が多く使われますが、弱点もあります。
外装変速の弱点
・変速時に音がする
チェーンが動くので、どうしてもガチャガチャと音がしてしまいます。
・チェーンが外れやすい
整備が行き届いていなかったり、重たいギアから軽いギアへと急に変速操作を行ったりすると、チェーンが外れてしまうことがあります。
・停止中に変速できない
チェーンが歯車から歯車へと移動する間は、ペダルを回さなくてはいけません。したがって、止まったまま変速することができません。
また、外装変速そのものの弱点ではありませんが、チェーンを使うために油汚れがつきものでもあります。
・こまめなメンテナンスが必要
チェーンや変速ワイヤー等の、こまめなメンテナンスが欠かせません。メンテナンスしやすいけど、メンテナンスの頻度も高いというわけです。
内装変速とは
内装変速は、シティサイクルや、街乗り主体のスポーツ自転車で多く使われている変速装置です。ギアを変えるのに必要な機構が、リアハブと呼ばれる部品の中に収まっているので「内装」と呼ばれます。
外装変速と比べると見た目は実にシンプルです。しかし、このリアハブの中に遊星歯車機構という複雑な歯車がびっしりと入っていて、変速を可能にしているのです。
内装変速のメリット
内装変速には、以下のようなメリットがあります。
・変速の時の音が静か
変速の時にチェーンが移動しないので、ほとんど音がしません。
・停止中にも変速できる
信号待ちの際など、止まったままの状態でギアを変えることができます
・ベルトドライブと相性抜群
油汚れと無縁のベルトドライブと組み合わせれば、静かでクリーンな変速装置になります。ベルトドライブ+内装変速なら、メンテナンスも簡単です。
・チェーンやベルトが外れにくい
そもそも外装変速と違ってチェーンやベルトはスライドしないので、脱落するというトラブルもありません。
内装変速の弱点
ただ、内装変速にも弱点はあります。
・重い
見た目はシンプルですが、中身は遊星歯車がギッシリで、どうしても少し重たくなってしまいます。
・トータルの変速段数が少なめ
内装変速の場合、シティサイクルでは3段、クロスバイクでは8段がポピュラーです。もっと段数を多くすることも技術的には可能なのですが、構造が複雑になったり、重たくなったり、そして価格が高くなったりしてしまいます。
・車輪の脱着が面倒
外装変速のロードバイクやクロスバイクに比べると、車輪の脱着に手間がかかります。
・ペダルに大きな力をかけながらの変速は苦手
停止中に変速できる内装変速ですが、その構造上、ペダルを漕ぐ力が強くかかっているときは、変速がうまくいかない場合があります。上り坂では、まだ惰性があるうちに変速するのがコツです。
どちらにするかは「用途とお好み」で
外装変速と内装変速の違い、そしてそれぞれのメリットや弱点を紹介しましたが、結局のところはどちらがよいのでしょうか。こればかりは、それぞれの特性を理解した上で「用途とお好みに応じて、どうぞ」ということになるでしょう。
BRIDGESTONE GREEN LABELのラインナップで言えば、例えば「CYLVA」と「ORDINA」のどちらにするかは、「価格の違い」や「外装変速か内装変速か」だけでなく「チェーンとベルトのどちらにするか」という選択でもあります。
今回紹介した内容を踏まえれば、ブリヂストンのラインナップだと軽さや幅広いギアを活かした走り、そしてホイールの脱着のしやすさといった点にメリットを感じるのであれば外装変速のCYLVA、シンプルな操作や静かさ、クリーンさを重視したいなら、そしてそしてメンテナンスの手間を省きたいならORDINAということになるでしょうか。
みなさんのお好みは、どちらですか?